「悔い改めの結実を目指して」
~声明文など意思表明の必要性

福音による和解委員会 宮崎誉
 
 迫害下にあった使徒ペテロは語りました。「神に聞き従うよりも、あなたがたに聞き従う方が、神の前に正しいか…判断してもらいたい」(使徒四19)。私たちの歴史を振り返る時、この御言葉は二重の意味を持っていると思います。一つは、ホーリネス弾圧の歴史を想起し、信仰の故に迫害を受ける時に、誰を主と告白して生きるかという問いです。もう一つは、戦後50年をきっかけに始まり、辿りついた戦争責任告白に真実であり続けるための戦いです。

 歴史には多くの場合に影の部分があります。戦後50年を迎えて、資料を掘り起こした時に、私たちは信仰の遺産と共に、罪責という負の遺産を抱えていたことに気づかされました。純粋に神に従う方々もあったことでしょう。しかし、当時の機関紙などの資料には、アジア諸国へ向かう天皇の名による戦争を「聖戦」と呼び、戦勝祈願祈祷会を行い、国民儀礼として天皇崇拝を行っていたことが繰り返し記されています。詳細は、『「日本ホーリネス教団の戦争責任に関する私たちの告白」の資料と解説』(1998年)をご覧ください。言うならば、神に聞き従うよりも、世に従った姿が記録されていたのです。それに気づいた戦後50年以降、その課題に向き合い、一九九七年三月の第三四回教団総会にて、戦争責任告白を採択しました。

 当時の教団委員長は松木祐三先生で、翌年のアジア太平洋地域ホーリネス教会連盟で、戦争責任告白を発表され、日本ホーリネス教団がこの罪責告白から再出発し、真摯に歩もうとしている決意を伝えました。松木先生はこの経験をザアカイの悔い改めと重ねて説教し、悔い改めはお詫びで留まらず、私たちを愛の奉仕者に作り変え、和解の実が結ばれて行くことを証しています(『主に従う者に与えられる祝福の道』538頁)。

 戦責告白は、将来に向けて記しています。「今後、私たちの教会は、「日本ホーリネス教団の信仰告白」に基づいて、神のみこころに適う教会の形成を目指します…歴史に学ぶことを忘れずに、私たちが置かれている時代と社会の状況を見極めることができるような体制によって、社会への責任を果たすことを目指します…アジア諸国の人々の心情を理解することを努め…アジア太平洋地域ホーリネス教会連盟〔現在は、世界ホーリネス教会連盟〕の交わりを豊かなものとすることを目指します」。

 この志に、真実に生きようと、教会内の啓発活動を行い、世に対しては、為政者が、①信教の自由に抵触する場合、また、②戦前のホーリネス弾圧を彷彿させる場合に、私たち自身の戦中の過ちを思い起こしつつ、預言者的使命に立って、抗議・表明・要請などを行うことを、1997年以降の役割の一つとしてきました。2014年には、「日本ホーリネス教団が政府等に対して声明を発表する際のガイドライン」を文章化しました(教団HP内の和解委員会コーナーで閲覧できます)。教団委員会と和解委員会とが、どのようなプロセスでこの働きを継続してきたかが文章としてまとめられています。
戦責告白に真実な歩みを、和解の福音の実践として、皆さんと共に御心を求めつつ進みたいと願っています(Ⅱコリ5:18~21)。
(2015年5月「りばいばる」誌)